研究課題
n型及びp型4H及び6H-SiCエビ基板上に、乾燥酸素での酸化(1180℃)及び、その後の水蒸気処理(800℃)により金属-酸化膜-半導体(MOS)キャパシタを作製し、電気特性(容量-電圧特性、電流-電圧特性)を評価した後、MOSキャパシタへMeV級のエネルギーを有する酸素(O)イオンを入射し、ゲート酸化膜を介して観測される誘起過渡電流を計測した。更に、MOSキャパシタへ^<60>Coガンマ線を照射し、その後、同様なMeV級Oイオン照射実験を行うことで、誘起過渡電流に及ぼすガンマ線照射の効果を調べた。具体的な結果は以下の通りである。1.p型エビ基板上のMOSキャパシタにおいても、これまでにn型MOSキャパシタで確認されていた、Oイオン入射によってMOSキャパシタのゲートから観測されるイオン誘起過渡電流のピーク値が、入射Oイオン数の増加と共に減少すること、更に、照射後、MOSキャパシタに順方向バイアスを印加することで、過渡電流ピーク値が元に戻ることが判明した。これにより、p型においても、深い界面準位等の帯電等がイオン誘起過渡電流に影響を及ぼすことが分かった。2.n型エビ基板上のMOSとp型のMOSを比較すると、p型の方が、過渡電流のピーク値が急激に低下することが見出された。収集される電荷が少数キャリアであることから、p型ではn型に比べ移動度の大きな電子が、この振る舞いに関与しているためと結論できる。3.52.2kGyのガンマ線照射前後で過渡電流のピーク値を比較したところ、ガンマ線照射後の方が、ピーク値が小さくなることが判明した。しかしながら、得られたピーク値の低下は、電気特性測定の結果から見積もられるガンマ線照射により酸化膜に発生した電荷が原因の電圧変動では説明することができず、深い界面準位が関与することを示唆するものとなった。
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