本研究は、米国フェルミ国立加速器研究所(FNAL)において、120GeV陽子による生成二次粒子線を用いた物質内粒子線挙動測定実験を行うことを目的とする。 反陽子生成ターゲットにおいては、ターゲット周囲における鉄遮蔽体内における中性子減衰分布を測定した。これと、先に行った遮蔽体後背面における漏洩中性子分布の結果と併せて、簡易計算手法であるMoyer Modelにおけるパラメータの導出を行った。その結果、従来使用されていた数10GeV領域における値とほぼ同様の値を示し、従来よりも1桁以上高いエネルギー領域で、Moyer Modelが適用可能であることを示した。また、ターゲット周辺の空気中に生成するガス状放射能について、新たにインパクタ法及びBSD法を用いて測定を開始した。現在、データ解析中であるが、他の場所でも測定が可能であるとの見通しを得ている。 ニュートリノターゲット下流における測定では、化学分離を用いた放射化法により、二次粒子の岩石中における減衰を測定した。その結果、この二次粒子はほぼ数GeV領域のミュオンであることがその減衰分布から推定されている。また、TLD、CR39などの固体検出器を用いた測定結果から、ビーム軸と垂直方向に、ミュオンが岩石と反応し生成した中性子、電子、ガンマ線など三次粒子が生成されていることが示された。しかし、その分布に不自然なところがあることから、現在FNALと協議し、その詳細な測定を予定している。 今年度、新たにMeson Beam Test Facility(M-TEST)における測定の可能性について調査した。ここでは、120GeV陽子ビームを直接使用することができる。NE213液体シンチレーション検出器を用いた飛行時間法による測定の結果、中性子収量測定、二重微分断面積、放射化断面積などの測定が可能であることが明らかとなった。今後、本格的に、この場で断面積測定などを行っていく予定である。 これらの成果は、J-PARCなど高エネルギー加速器施設における安全評価に直接的に貢献すると共に、宇宙工学における線量評価及び宇宙線照射効果の研究においても影響を及ぼすものである。
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