サブナノイオン移動経路を有する結晶、およびナノーメソイオシ移動経路を有する複合体材料について、合成法の確立・電気化学特性の点から以下のように研究を進めた。 1.サブナノイオン移動経路を持つ物質の合成と構造解析及び物性評価 様々なイオン移動経路物質のうち、スピネル構造ではあるが鉄原子の欠陥状態が異なるγ-Fe_2O_3やFe_3O_4において、構造とリチウムイオン拡散などの固体内輸送特性との相関を調べるため、本年度はγ-Fe_2O_3を合成し、拡散係数を調べることとした。以前の我々の研究から、水溶液法で超微粒子のγ-Fe_2O_3を合成するためには、合成時に高比表面積の炭素材料を利用し、表面を反応場とすることで、核成長によるα-Fe_2O_3の生成を抑えることが有効であることが明らかとなっていた。しかし、γ-Fe_2O_3結晶単独での特性を調べるためには、リチウムと電気化学的に反応する炭素との複合体では不都合となった。そこで、pH、酸素のバブリング法、反応時間を様々に変え、合成条件を見直すことで炭素材料なしでもほぼ単相のγ相を得ることができた。拡散係数は電気化学的なGITT法で測定した。また、γ-Fe_2O_3にリチウムを電気化学的に挿入したときの構造の経時変化についても粉末X線回折を用いたリートベルト解析によって詳細に調べ、鉄イオンのサイト移動を詳細に明らかにした。 2.ナノーメソイオン移動経路をもつ物質の電気化学特性評価 充放電における負荷特性など速度論的な性質がメソスケール構造から受ける影響を調べるため、炭素材料とγ-Fe_2O_3との複合体におけるメソ構造と電気化学特性の相関を調べた。特に、窒素ガス吸着によって調べた微細孔(ミクロ孔やメソ孔)のサイズや存在量と、リチウムイオン電池電極としての充放電負荷特性との相関について調べた。
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