研究課題/領域番号 |
21370005
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 岳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (30221930)
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研究分担者 |
金子 正美 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (00347767)
星野 仏方 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (80438366)
矢吹 哲夫 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (50275484)
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キーワード | 気侯変動 / 生物圏現象 / リモートセンシング / 植物 / 生態学 / 高山生態系 / 地球温暖化 / 土壌乾燥化 |
研究概要 |
フィールドセンサス(工藤) 大雪山系で、チシマザサの分布拡大地におけるササの拡大速度を継続調査した。その結果、桿密度が年々拡大している実態が明らかとなった。また、高山湿潤草原の代表種であるバクサンイチゲ個体群の動態調査を継続し、土壌乾燥化により個体群の衰退が促進されることを見いだした。温暖化実験による高山植生動態の解析結果と、季節的な花粉媒介昆虫の変化が高山植物の種子生産にもたらす影響について論文を公表した。 航空写真による植生解析(金子) 大雪山五色ケ原におけるチシマザサ及びハイマツの分布拡大について、空中写真の比較解析により、32年間の面積変化を明らかにした。空中写真から地表面高を抽出し、チシマザサの分布拡大と地形との関係を解析した。この結果、ササの面積は26%、ハイマツは14%拡大していることが明らかとなった。また、ササの拡大地域をManlyの選択性指数を用いて解析したところ、東斜面、斜度0~20度、日射量83万ワット時m^2以上の地域に選好性がみられた。 衛星データによる広域センサス(星野) 光学・マイクロ波衛星データを用いて、五色ヶ原ササ拡大地域における地表面水分状況の季節変化を調査した。ササ密集地における土壌水分の季節変化は小さく比較的安定しているのに対し、高山植生が広く分布している場所の土壌水分は、6月から7月にかけて大きく変動し、8月から比較的安定状態に入ることが示された。7月~8月下旬までは土壌水分が増加傾向にあるが、8月下旬から植物の蒸発散によって土壌水分が下がる傾向を示した。 植生動態のモデル解析(矢吹) 雪解け水が流入する環境下でのササの被覆率と土壌水分量とのフィードバック効果を定量的に定式化した力学モデル(平均場モデル)を提起し、数値的な解析を行った。雪解け水供給の気温依存性を定式化し、ササの光合成速度の気温依存性と土壌水分依存性を過去の実測データに基づいて定式化し、気温変化によってササの被覆率と土壌水分量の間のフィードバック効果の状況がどう変わるかを解析した。チシマザサの被覆率について、雪解け水流入速度の気温依存性によるレジームシフトが生じる可能性が高いことを見出した。
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