研究概要 |
本研究は、(1)TrinidadとTobagoの野外13集団約1000個体のDNA配列決定と集団遺伝学的解析による自然選択の検出、(2)色覚進化モデルによる予測、(3)遺伝子型の判明している個体を用いた室内実験による検証という3つの手法を主に行う。また、予測検証にあたっては、室内行動実験、(4)遺伝子型及び野外環境データと実験結果を用いた統計解析による検証、という4つのアプローチにより進める。(1)においては、LWS遺伝子の4遺伝子座、SWS1,RH1遺伝子座、比較として、ND2, aldrase, creatine kinase 1の遺伝子座と8マイクロサテライト遺伝子座を約1000個体すべてにおいて配列と遺伝子型を決定し、集団遺伝学的分子進化解析を行うことで自然選択の検出を行う。 21年度において、上記遺伝子座の700個体の配列をほぼ読むことができた。LWS-A,B,Cにおいて多型の存在が確認された。特にPitch Lakeと他の集団間では、異なる対立遺伝子が優先しており、divergent selectionが働いている可能性がある。また、Lower Apripoの集団内での多型維持にはbalancing selectionが働いている可能性が考えられた。それら多型に自然選択が働いているかどうかを検出するために、現在、ldrase, creatine kinase 1の他に、比較用にゲノム上の中立な遺伝子8座位の配列解読に取りかかった。また、LWS-A,B,CおよびDの遺伝子座が網膜のどの位置で発現しているかどうかを調べるためのin situ hybridizationの実験を開始した。現在SWSについては、網膜に一様に発現していることがわかった。
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