研究課題
本年度は亜熱帯浅海域生態系(石垣島沿岸・石西礁湖)において造礁サンゴを中心とする主要一次生産者を対象とした現地調査を6月、8~9月、1月の3回にわたり実施し、造礁サンゴとその共生褐虫藻のバルクならびに分子種別窒素安定同位体比と環境負荷との関係について精力的な調査を行った。アミノ酸の分子種別窒素同位体比にも人為的栄養塩負荷の影響が明瞭に反映されることを確認した。得られたデータに関してはなお詳細に解析中である。並行して、陸域からの物質負荷の影響に関して、沿岸生態系の水質や懸濁物組成のモニタリングを実施した。特に懸濁物のモニタリング結果からは、懸濁物の安定同位体比を利用して礁外からの異地性有機物流入と礁内における現地性有機物生産とを区別する特徴が見いだされた。今後、流動場モデル等と組み合わせることにより異地性・現地性有機物の動態についてより定量的に解明していくことを計画している。また降水由来の栄養塩負荷を評価するために降水の定期的なサンプリングを実施した。降水の調査は本研究開始直前から継続して行っているもので、本年度の調査を通して特に冬季~春季にかけて大陸由来と想定される顕著な栄養塩負荷が発生していることが確認された。また今年度は、微量な生物・環境試料における分子種別安定同位体比分析を可能にするためにガスクロマトグラフ用PTVインジェクタを本研究費により導入した。メーカー側の都合により納期が遅れたことと研究所の移転(3月)に重なったことのため、本装置のセットアップと動作検証を22年度前半に持ち越して実施した。ただし残念なことに、本装置は23年3月11日の東日本大震災の際に浸水事故の被害を受けて故障し、メーカーにより保証解除の措置が執られたため、十分な利用の機会がないままに廃棄せざるを得なくなった。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Estuarine, Coastal and Shelf Sciemce
巻: 85 ページ: 231-240
Journal of Experimental Marine Biology and Ecology
巻: 377 ページ: 101-106
Biogeochemistry
巻: 95 ページ: 243-260