研究課題/領域番号 |
21370013
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
矢原 徹一 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90158048)
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研究分担者 |
舘田 英典 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70216985)
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
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キーワード | 送粉シンドローム / 花色 / 花香 / 種分化 / キスゲ属 |
研究概要 |
本研究の目標は、蝶媒に適応したハマカンゾウと蛾媒に適応したキスゲを用いて、協調的にはたらく適応形質のセットが、ある状態から他の状態へと進化的にシフトする機構を解明することである。この目的のため、ハマカンゾウとキスゲのF2雑種を作成し、遺伝学・生態学・分子生物学的アプローチを統合した研究を進めている。平成21年度には、花色の種差に関与するアントシアニン色素のF2雑種における分離を調べ、2つの主要遺伝子が関与していることを示した。また、アントシアニン合成系の酵素遺伝子の発現解析を行い、CHSなどいくつかの遺伝子の発現がキスゲの花弁の発達過程で抑制されることを明らかにした。この結果から、花色の進化には調節遺伝子が関与したと考えられる。また、F2実験集団を用いた自然淘汰プロセスの実証研究を行い、アゲハチョウ類は赤花を有意に選好するが、スズメガ類は花色・花香のいずれにも一貫した選好性を示さないことを明らかにした。スズメガ類は花蜜量の変化に応じて可塑的に選好する花を変えていると考えられる。したがって、アゲハチョウ類の利用度が低下した環境では、花色の違いや花香の有無にかかわらず、スズメガ類が送粉者として有効にはたらくだろう。このようなスズメガ類の行動の可塑性が、アゲハチョウ媒からスズメガ媒へのシフトを容易にしていると考えられる。このような実証データにもとづいて、アゲハチョウ媒からスズメガ媒への進化プロセスのモデルを構築した。
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