研究課題
クロロフィル代謝は50年以上にわたる研究によって、その大まかな経路が決定され、さらにそれを担う多くの酵素遺伝子が同定された。しかし、幾つかの酵素がまだ同定されておらず、さらに代謝経路に関しても、未解明な点が残されている。一方、最近の研究によって、クロロフィル代謝は多様な生理現象と深く関わっていることが明らかになり、さらに農学的応用の可能性も指摘されてきた。このような点を背景に、本研究は、(1)クロロフィル代謝に関わる全遺伝子の同定、(2)代謝経路の確定、(3)調節機構の解明、(4)クロロフィル代謝の多機能の解明、(5)応用研究への展開を目指したものである。特に本年度は、未同定な酵素遺伝子の同定に取り組んだ。クロロフィルaとクロロフィルbの相互転換系をクロロフィルサイクルと呼ぶ。クロロフィルサイクルは、クロロフィルaからクロロフィルbを合成するクロロフィリドaオキシゲナーゼ(CAO)、クロロフィルbを還元し7-ヒドロキシメチルクロロフィルaに転換するクロロフィルb還元酵素(CBR)、7-ヒドロキシメチルクロロフィルaをクロロフィルaに転換する7-ヒドロキシメチルクロロフィルa還元酵素(HCAR)の3つの酵素からなっている。CAOとCBRは既に同定されているが、HCARは未同定のまま残されている。我々は、葉緑体に存在する鉄硫黄-フラビンタンパク質を大腸菌で発現させ、精製した後、この組換えタンパク質がHCAR活性を持っているかを調べた。その結果、このタンパク質は還元型フェレドキシンの存在下で、7-ヒドロキシメチルクロロフィルaをクロロフィルaに転換する活性を持っていることが明らかになった。この遺伝子の欠損株は、7-ヒドロキシメチルクロロフィルaを蓄積することも示された。これらの結果により、クロロフィルサイクルの最後の未同定遺伝子HCARを同定することに成功した。
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