(1)シゾン細胞周期の開始期には、まず光によりオルガネラDNA合成(ODR)が活性化されるが、この際には未同定のCyclin/CDK複合体の関与が示唆されている。本年度の実験では想定されるCDKBについて免疫沈降、活性測定を行ない、CDKBが実際にODR開始期に活性化を受けていることが示された。現在、免疫沈降の条件検討を進め、複合体を形成しているCyclinについて検討中である。(2)シゾンODRの開始にはMAPKカスケードの活性化が必須である。この経路を明らかにする目的で、シゾンゲノムにコードされる3種MAPKの発現について検討した。同調細胞と特異的抗体を用いたウェスタン解析により、MAPK1が恒常的に発現していること。MAPK2、MAPK3が光照射後、ODRの時期に一過的に増加することが判り、MAPK2またはMAPK3の関与が示唆された。(3)光による核転写活性化制御について、ヒストン修飾の関与を検討した。まずシゾンからヒストンタンパク質の抽出条件を検討したのち、入手可能な修飾ヒストン特異的モノクローナル抗体を用いたウェスタン解析を行なった。その結果試みた抗体のうち、ヒストンH3ではK9アセチル化、K9アセチル化+S10リン酸化、K9トリメチル化、K9ジメチル化、K27トリメチル化、K9アセチル化+K14アセチル化、ヒストンH4ではK20のジメチル化について反応が確認され、これら修飾の存在が示唆された。また、H3K4のトリメチル化については同調培養系で光照射による増加が確認され、現在、これが光照射によるものか、細胞周期に依存した変化であるかを検討中である。
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