研究概要 |
シロイヌナズナを用い,植物特異的膜交通制御因子の機能解析をおこなった.これまでの遺伝学的解析により,陸上植物に特異的なRAB5ホモログであるARA6が保存型RAB5と桔抗した機能を持つ可能性が示唆されていたが,その詳細な分子機能は不明であった.そこで,ARA6の詳細な細胞内局在解析をおこなったところ,これまでエンドソームにのみ局在していると思われていたARA6が,細胞膜上にも局在していることが明らかとなった.このことから,ARA6は細胞膜上でも機能することが示唆された.これと並行し,植物にのみ存在するR-SNAREであるVAMP727の機能解析も推し進めた.その結果,VAMP727が液胞のQ-SNAREのみならず,細胞膜上のQ-SNAREであるSYP121/PEN1とも複合体を形成することを突き止めた.エンドサイトーシスの阻害によりVAMP727は細胞膜上に蓄積するが,ara6変異体においてはその蓄積が見られなかった.そこで,野生型とara6変異体におけるVAMP727複合体の量を調べたところ,ara6変異体中では細胞膜のQ-SNAREとの複合体のみが顕著に減少していることが明らかとなった.これらのことから,ARA6がVAMP727とSYP121の複合体形成を促進することにより,エンドソームから細胞膜への輸送を制御していることが明らかとなった.我々はこれまでに,VAMP727がVAM3と複合体を形成することにより.液胞とエンドソーム間の膜融合を実行することを明らかにしている.今回の発見により,植物ユニークな膜融合装置が,エンドソームを中心とした複数の輸送経路で機能していることが示された.
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