研究課題
平成21年度は、MCA1遺伝子とMCA2遺伝子の欠損株を使って、植物の低温刺激と高濃度イオン刺激に対する応答の研究を行った。その結果、まずMCA1とMCA2が低温センサーとして機能する可能性を示す研究結果を得た。すなわち、植物に低温刺激を加えると瞬時に細胞質Ca^<2+>濃度が一過的に上昇することが知られているが、mca1欠損株、mca2欠損株、およびmca1 mca2二重欠損株において、その上昇が野生株に比べ小さいことを発見した。また、種々のイオンを培地に加えた時のMCA1遺伝子とMCA2遺伝子の欠損株の生育を調べた。その結果、Mg^<2+>を高濃度に加えるとmca1 mca2二重欠損株の生育が阻害されたが、野生株、mca1欠損株、およびmca2欠損株は阻害を受けなかった。このことから、シロイヌナズナのMg^<2+>感受性に関して、MCA1とMCA2は補完的にはたらいていることが示唆された。植物体におけるMCA1とMCA2の発現部位を、それぞれMCA1promoter::GUS発現株とMCA2promoter::GUS発現株に対するGUS染色法で調べた。その結果、両者とも共通して根と地上部の維管束系に多く発現していた。ただし、両者は互いに異なる器官で発現していることも観察され、機能分担がなされていることが示唆された。以上の結果から、MCA1とMCA2はもともと機械刺激の受容に関与するイオンチャネルの候補として単離されたが、それに加え、低温刺激やイオンストレスに対する応答機構にも関与することが示唆され、両タンパク質の植物体での多様なはたらきが明らかになった。MCA1とMCA2は我々が発見したものであり、世界に先駆けてこのCa^<2+>透過性機械受容チャネル候補の重要性を明らかにしている段階である。
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