研究計画にそって、当該年度は概日時計機構を中心に解析した。高等植物(シロイヌナズナ)のオルガネラ形成に重要な働きをしていると考えられる概日時計分子機構に関するモデルを提唱した。具体的にはPRR因子群(PRR9/7/5)に関する広範な遺伝解析を行い、これらの因子が時計中心振動体の一部として機能している証拠を示した。また、これらの時計遺伝子変異株においては光形態形成に関して顕著な表現型を示し、特に緑化(クロロプラストの分化)にも時計機構が深く関わっていることを示した。 加えて、研究計画にそって、当該年度はリン酸リレー系に依存したホルモン応答情報伝達機構を中心に解析した。サイトカイニン受容初発情報伝達機能の基本フレームワークを明らかにした。特に、転写因子PRR1/10/12が中心的は働きをしてメインパスウエイを担っていることを遺伝学的に証明した。また、シロイヌナズナの11種類のセンサーHisキナーゼの内で最後まで機能が不明であったAHK5がABAとエチレンの情報伝達系に関与して根の伸長制御因子として働いていることを明らかにした また、植物ホルモンサイトカイニンによるオルガネラ分化の制御機構を解析する目的で、サイトカイニン受容体に依存した情報伝達機能の分子メカニズムの解析に焦点をあてた。特に、サイトカイニン応答性転写因子であるB型ARRに関する遺伝学的解析を行った。イロイヌナズナにはサイトカイニン応答性転写因子ARR遺伝子が少なくとも7種類有る(ARR1、ARR2、ARR10、ARR11、ARR12、ARR14、ARR18)。これらの遺伝子のうちでサイトカイニン情報伝達に最も重要な働きをしている遺伝子を遺伝学的に特定することを試みた。具体的には、これら遺伝子の機能欠損アリルを揃え、それらを色々組み合わせることにより各種の多重変異体を作成した。
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