研究課題
ジベレリン(GA)は植物の伸長成長に顕著な促進作用を示す植物ホルモンである。本研究の目的はGAの信号伝達系がいかにして、新たな遺伝子発現の変化を引き起こすかを解明することにある。GAの内生量が低くなるとGA生合成の終盤反応を触媒するGA 3-酸化酵素とGA 20-酸化酵素をコードする遺伝子の転写量が増大することでGAの恒常性が維持される。これまで我々はbZIP型転写因子RSGがGA 20-酸化酵素遺伝子のフィードバック制御に関与することを明らかにしてきた。しかしその制御は直接なのか間接なのかは不明であった。GA 20-酸化酵素遺伝子のプロモーター上にはRSGの結合モチーフに似た配列が存在し、その配列に変異を導入するとフィードバック制御を受けなくなることが明らかになった。ゲルシフト法による解析から、この配列に実際にRSGが結合することが示された。さらにクロマチン免疫沈降法によりRSGはGA 20-酸化酵素遺伝子のプロモーターと細胞内で結合すること、そしてその結合はGA内生量の低下で増大し、GA投与により消失することを明らかにした。この結果はRSGがGA 20-酸化酵素遺伝子のプロモーターに直接的に結合し、GA内生量依存的な転写調節に関与していることを示している。遺伝子の転写調節にはヒストンのメチル化やアセチル化などの修飾が重要である。そこでGA内生量を変化させた時に転写抑制の標識であるヒストンH3の9番目のリジン残基のメチル化と転写活性化の標識であるヒストンH3のアセチル化状態をクロマチン免疫沈降法により調べた。その結果、GA内生量が低下するとH3の9番目のリジン残基のメチル化が消失しヒストンH3のアセチル化が亢進すること、GA投与によりヒストンH3のアセチル化が消失することが示された。フィードバック制御にはヒストンコードの修飾が関与すると考えられた。
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Plant Sig. Behav. 4
ページ: 372-374