卵巣の重要な機能はステロイドホルモン合成と排卵である。脊椎動物の排卵がプロスタグランジン(PG)により誘導されることは広く知られているが、その機構は不明である。本研究においては、排卵の実行に関わる溶解酵素(排卵酵素)が同定された唯一の動物であるメダカを用いて、PGによる排卵誘導の分子機構を解明することを目的としている。 本年度においては、(ア)in vitro排卵実験系を利用したPGの排卵誘導作用の確認、(イ)卵巣内及び濾胞内PGの検出とその濃度変動の解析、及び(ウ)メダカ卵巣に発現するサイクロオキシゲナーゼ(COX)の解析を行うことを計画した。実際、これらの計画はほぼ実施できた。以下に得られた成果について記載する。 (1)メダカ卵巣から単離した濾胞の排卵は、PG産生酵素であるCOXの阻害剤(インドメタシン)により抑制されたが、プロスタグランジンE2(PGE2)の同時添加により回復した。よって、PGがメダカの排卵に関与することを確認した。 (2)排卵予定のメダカ濾胞を用いてPGE2の定量を行い、PGE2が排卵濾胞内では恒常的に産生されていることを明らかにした。 (3)メダカゲノムにPG産生に関わる酵素遺伝子3種類(COX-1a、COX-1b、及びCOX-2)が存在するが、排卵濾胞に発現するCOX遺伝子はCOX-2遺伝子のみであり、これがメダカの排卵に重要であることを明らかにした。 この他に、COX-2に対する特異的抗体を作製して、今後のタンパクレベルの解析のための基盤を確立したこと、また、メダカ卵巣濾胞にEP4b(PGE2受容体)が高発現することを明らかにした。
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