中心体はほとんどの真核細胞に見られる細胞内小器官で、細胞分裂においては紡錘体の形成に働く。花の咲く植物(顕花植物)は進化の過程で中心体を失ったため、顕花植物の細胞がどのようにして紡錘体を形作るのかは大きな謎である。申請者は顕花植物の微小管が枝分かれにより生じることを示し、顕花植物の紡錘体は微小管の枝分かれの結果により構築されることを提唱した。本研究では、申請者が提唱した「植物の紡錘体は微小管の枝分かれにより構築される」という仮説を検証する。 平成21年度の研究内容は、1)固定、染色した紡錘体の構造のデコンボリューションによる解析、2)標識チューブリンを顕微注入するシステムの確立、3)次年度以降に用いる形質転換細胞の作成、の3つである。 1)紡錘体の構造のデコンボリューションによる解析 紡錘体で解析を行う予備実験として、これまでのデータの蓄積がある隔膜形成体でデコンボリューションを試みた。微小管プラス端マーカーGFP-EB1を発現させたタバコ培養細胞で免疫染色を行うと、GFP-EB1が消失することから、固定時に微小管の短縮が起こっていることがわかった。また、封入剤の屈折率が低いため、デコンボリューション前の像に光学的歪みが生じていることがわかった。これらの問題を解決するため、細胞を液化プロパンで凍結し、高屈折率の溶媒であるチオジエタノールで封入する方法を開発した。 2)標識チューブリンの顕微注入 ローダミン標識したブタ脳チューブリンをタバコ培養細胞に顕微注射することを試みた。注射前にチューブリンがガラス針内で重合してしまう問題が発生したため、使用する緩衝液の検討中である。 3)形質転換細胞の作成 研究計画時に考えていたmRFPよりもtagRFPのほうが高性能であることが報告されたので、tagRFP融合タンパク質を発現するDNA配列の構築中である。
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