研究概要 |
中心体はほとんどの真核細胞に見られる細胞内小器官で、細胞分裂においては紡錘体の形成に働く。花の咲く植物(顕花植物)は進化の過程で中心体を失ったため、顕花植物の細胞がどのようにして紡錘体を形作るのかは大きな謎である。本研究計画では、研究代表者自らが提唱している「植物の紡錘体は微小管の枝分かれにより構築される」という仮説を検証する。本年度は、紡錘体の構造を解析するために、1)高解像度デコンボシューション法の確立、2)蛍光チューブリン顕微注入法の確立、3)微小管プラス端、マイナス端を蛍光標識する形質転換体の作成、4)微小管交換率の測定法の確立、を行った。 1)複雑な微小管クラスターの中で個々の微小管を識別するためのデコンボリューション法の確立を試みた。高解像度デコンボリューションのためには、高解像度の3次元画像スタック(x,y,z)が必要だが、これまでは蛍光色素の光退色のため高解像度のスタックが得られなかった。蛍光色素および退色防止剤を見直すことにより、高解像度のスタックが得られるようになった。しかし、デコンボリューション後の画像は、必要な解像度には達していない。 2)GFPチューブリン発現量の低い細胞が偶然得られた。この細胞を使うことにより、顕微注入なしに微小管のスペックル解析が可能になった。現在、細胞中心部の解像度低下の問題を解決するため、条件検討を続けている。 3)微小管プラス端マーカーと微小管全体マーカーの共発現細胞は増殖が著しく低下したため、実用に耐える形質転換体はできていない。微小管マイナス端マーカーの発現細胞は、現在作成中である。 4)微小管を2色の蛍光タンパク質で標識し、一方の蛍光色素だけを光退色させることにより、微小管集団中の微小管交換率を測定することに成功した。この方法は紡錘体の構築機構を解析するのに非常に有用と考えられる。
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