本研究は、生殖細胞系列の発生運命決定機構、および生殖細胞系列の性差形成機構を解明することを目的とする。平成23年度は、以下の成果を得た。1)始原生殖細胞の性決定は、sxlによる自律的な雌化と生殖巣による非自律的な雄化の2段階で進行すると考えられてきた。これまでの研究から、sxlが始原生殖細胞の雌化を引き起こすために必要十分な機能を持つマスタージーンであることが明らかとなった。そこで、雌特異的なsxlの活性化に関わる遺伝子について調べたところ、母性供給されるbHLHタンパク質Daughterless(Da)は、体細胞と同様に始原生殖細胞中においてもsxlの発現に関与するが、X染色体上にコードされるScやSis-Aタンパク質は始原生殖細胞内ではsxlの発現に関与しない。このことは、体細胞と始原生殖細胞ではsxl遺伝子の活性化、すなわち雌化の機構が異なる事を示しており、sxl活性化に関わるるX染色体上の新規遺伝子の単離を開始した。2)また、始原生殖細胞中で生殖細胞特異的な遺伝子発現の活性化に関わるovo遺伝子に関して、母性ovoの機能が始原生殖細胞の発生に必須であるとの結論を得た。これに関しては、現在論文作成中である。
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