研究概要 |
本研究は,豊かな種多様性を誇る西日本の純淡水魚類相の歴史的・生態学的形成プロセスを,これまでにない大規模な遺伝子データセットと新たな分析手法を駆使して,総合的に解き明かすことを目的とする.研究期間に,(1)西日本の主要な純淡水魚種に関する系統地理パターンの解明と比較,(2)現在の分布および地質年代における古地理復元に基づく,主要魚種それぞれの出現予測モデルの構築,(3)さまざまなDNAマーカーと,国内外来種の分布拡大時の動態を"実験"として利用することによる,群集構成種の地理的分化・分布域拡大・二次的接触による相互作用といった動的歴史の復元と検証,の3項目を実施する. 1.ミトコンドリアDNAを用いた多種系統地理解析:コイ科を中心に約20種の魚種に関して,野外試料収集とミトコンドリアDNA部分塩基配列を用いた系統地理分析を進め,約60%を終了した.一部成果について,学会発表および論文公表を行った. 2.各魚種の出現予測モデルの構築:西日本の純淡水魚類相において解明すべき主要課題を集約・設定し,魚類分布データの収集(環境省,国土交通省のデータベース,独自データ,その他)を実施した.ニッチモデリングおよびGISソフトウェアの習熟,および利用可能なデータの状方収集と整理を進めた. 3.集団分化・分布拡大・二次的接触後の動態 (1)mtDNAおよび核DNAを用いた統計的推定:mtDNAおよび核DNA(AFLP分析)を併用し,まずオヤニラミを主な対象として,集団の分化や分布拡大,二次的接触による遺伝的交流様態を明らかにした. (2)国内外来集団を用いた「実験的」検証:オイカワ,モツゴ,ハス,ゼゼラ等を対象にmtDNAマーカーを用いて人為的撹乱を定量化し,一部成果につき学会発表を行った.
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