研究課題/領域番号 |
21370036
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬戸口 浩彰 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 准教授 (70206647)
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研究分担者 |
長谷 あきら 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40183082)
藤井 紀行 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (40305412)
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キーワード | 適応 / 環境応答 / 進化 / フィトクロム / 光環境 / Cardamine / phyE / 高山植物 |
研究概要 |
本年度は、ミヤマタネツケバナCardamine nipponicaの高緯度(北海道)と低緯度(中部山岳)の比較系において、全ての光受容遺伝子(赤色光受容に関わるphyと、青色光受容に関わるcryの全ての遺伝子)を対象にして塩基配列を解析した。その結果、フィトクロムE(phyE)遺伝子だけが自然選択を受けていることが明確になった。この知見は、3本の論文にして公表した(Genetics, Molecular Biology and Evolution)。引き続き、寒冷な高山で直射日光を受けて生きる高山植物において、数ある光受容遺伝子の中でphyEだけが選択的に適応進化していることを検証するために、コメバツガザクラArcterica nanaにおいて、同様に全ての光受容遺伝子における自然選択を検証した。その結果、やはりphyEだけにおいて、特定の塩基サイト(C360T)が集団内に出現する頻度が、緯度に沿った傾斜をもっており、自然選択を受けていることが判った。このサイトはアミノ酸置換を伴う変位であった(Pl20L)。この結果は、Molecular Ecologyに受理された。このように、phyEは、寒冷な高山で直射日光を受けて生きる高山植物において、周囲の光環境を受容して適応することに寄与していることが、複数の種で重層的に検証できた。また、ミヤマタネツケバナの高緯度型と低緯度型の間で、光応答性の違いが表現形に現れる違いについて検証した。両地域の種子を発芽させて、同一条件下の光環境下で生育をさせたところ、胚軸長において低緯度地域のほうが高緯度地域よりも有意に伸長することが明らかになった。その一方で、フィトクロムEの高緯度型・低緯度型における、色素タンパク質としての特性や機能を生理生化学的に検証する研究は継続中であり、とくに論文にまとめるレベルには至らなかった。
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