研究課題/領域番号 |
21370038
|
研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
遊川 知久 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (50280524)
|
研究分担者 |
三吉 一光 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (60312237)
上野 修 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70414886)
|
キーワード | 植物 / 担子菌 / 進化 / ラン科 / 解剖学 / 分類学 / 形態学 / 共生 |
研究概要 |
ラン科シュンラン属において無葉緑性が1回進化したこと、無葉緑性のマヤランとサガミランは単系統群となり、両種の姉妹群には普通葉を生じるナギランが、これらに対する外群としてシュンランが位置すること、無葉緑性の進化に伴い菌根菌パートナーがシフトすることを、これまでに明らかにした。本属における無葉緑性の進化とそれにリンクする共生菌相の進化は、菌従属栄養性への進化と関連すると考えられるものの検証されていない。そこで植物と菌の間で炭素および窒素安定同位体比の異なる特性を用いて、上記シュンラン属4種の菌従属栄養性の程度を評価した。解析の結果、シュンラン属4種の栄養器官を構成する炭素と窒素の一部は、菌に由来していることが明らかになった。なかでも無葉緑性のマヤランとサガミランの菌従属栄養性の程度が高かった。シュンランとナギランについては、菌従属栄養性の程度が典型的な独立栄養植物種と同等の値を示すものからマヤランやサガミランと同等の値を示すものまで、個体によりばらつきが大きかった。この結果は、シュンランとナギランにおいて、生活史のステージや自生環境によって菌類従属栄養性の程度が変化することを示唆する。以上の結果から、シュンラン属においては普通葉を生じる種において既に菌従属栄養性を有し、この形質が前適応となり、生活史を通じてより菌類に栄養を依存するマヤランとサガミランが進化したと推定される。
|