研究概要 |
1.V-ATPaseローターリングの構造解析 V-ATPaseはATPの加水分解によりプロトンを輸送する膜超分子複合体である。ATP駆動性の回転力が膜内在性のVo部分のローターリングを回転させることによりプロトンが輸送される。2次元結晶の電子線構造解析は、膜に包埋された状態で膜タンパク質の構造を明らかにし、分解能がよければ膜に包埋されている領域を特定できる優れた構造解析法である。回転運動によるプロトン輸送機構を解明するためには、ローターリングのどこが膜に包埋しているかを知る必要がある。そこで、ローターリング(Vo-cring)の電子線構造解析を実施するために、2次元結晶の最適化条件の検討を引き続き行った。条件検討を重ねた結果、重なりが少なく電子線結晶構造解析に適した2D結晶シートが再現性よく得られるようになった。得られた電子線解析像を解析した結果以前のものとは異なる結晶系が得られた。この新しい結晶シートから得られた電子線回折像を用いて3次元構造の再構成を実施し、部分的に6A分解能の構造情報が得られている。 2.V-ATPaseの全体構造に向けた安定化変異体の作成 ポロV-ATPaseの2D結晶シートが得られているものの、配向性が悪く構造解析に向かない。その理由は結晶中のV-ATPaseのV1部分がVo部分から脱離し、結晶シートに空白領域を形成するためである。そこで、V1部分が脱離しないようV1とVoの外周固定子間でのS-S結合による固定化を試みる。そのために、V1 BサブユニットおよびEサブユニットにそれぞれ3つずつシステイン残基を導入したV-ATPaseを作成中である。導入位置は、単粒子解析で明らかになった構造情報を基にしている(Lau and Rubinstein, Nature 2012)。
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