研究課題/領域番号 |
21370047
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片平 正人 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (70211844)
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研究分担者 |
永田 崇 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (10415250)
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キーワード | 生物物理 / タンパク質 / NMR / 分子認識 / 立体構造 / RNA / 複合体 |
研究概要 |
テロメレースは、テロメアDNAに作用してこれを伸長する事で癌の原因となっている。本研究ではA1タンパク質-テロメアDNA-テロメレースRNAの複合体における相互作用様式を、NMR法によって構造学的な見地から解析し、A1タンパク質がテロメレースの活性の発現を引き起こしている仕組みに迫った。 常磁性緩和促進及び残余双極子結合を用いたロングレンジの構造情報の取得に関しては、A1タンパク質と同じRRM型の類縁タンパク質であるMusashiを用いて方法論の確立を行った。NOEから得られるショートレンジの構造情報に、これらの情報を加味する事で、Musashiタンパク質とその標的RNAの複合体の立体構造を決定する事に成功した。RNAのグアニン塩基を、タンパク質の2つのフェニルアラニン環が両側からサンドイッチする事で認識するという新しい分子認識様式が見出された。さらに同タンパク質がいかにして4残基ないしは3残基からなる特定の塩基配列を特異的に認識するのかに関し、そのメカニズムが明らかになった。 A1タンパク質-テロメアDNA-テロメレースRNAの複合体に関し、ショートレンジの構造情報とケミカルシフトパータベーションから得られた情報に、ロングレンジの構造情報を加味して総合的な考察を行った。その結果A1タンパク質の2つのRRM型ドメインの内、片方がテロメアDNAと結合し、同時にもう片方がテロメレースRNAと結合する事が構造学的に可能であり、実際にそのような相互作用様式をとっている事が強く示唆された。 また標的配列に近い親和性を有する別の核酸を添加すると、タンパク質の奪い合いが生じて、本来の相互作用が妨害される事が実験的に確認された。 以上より、おとりの核酸(デコイ核酸)によりA1タンパク質の働きを妨害する事によってテロメレースの活性の発現を阻害し、この事によって癌治療を目指すというストラテジーは有望であると考えられた。
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