研究概要 |
前年度までに、ω3脂肪酸合成酵素のトランスジェニックマウス(fat-1マウス)と高速液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)を用いたω3脂肪酸代謝物の網羅的メタボローム解析を行った結果、fat-1マウスの体内からEPAのモノヒドロキシ体である18-HEPEに由来する新規代謝物を複数見いだし、その中から急性腹膜炎における初期の好中球の浸潤を強力に抑制する活性を有する抗炎症性代謝物として17,18-diHEPEを新規に同定した。本年度はこれら活性代謝物の絶対構造を明らかにする目的で、光学活性な前駆体化合物として18(R)-HEPEと18(S)-HEPEをそれぞれ有機合成し(本学部有機反応化学教室、井上将行教授との共同研究)、それらを前駆体としたin vitroのリポキシゲナーゼ酵素反応を行い、その生成物について、C18逆相カラムおよびキラルカラムを用いた分離、解析を行なった。その結果、17位およ18位の水酸基の配位がそれぞれ異なるRS, RR, SR, SSの計4種類のジアステレオマーが存在し、そのうち生体内に存在するものは主にRS,RRの2種類であることが判明した。また、化合物の二重結合のシス、トランス配位については、理化学研究所NMR施設の高感度NMR(800MHz)を用いた解析を行った。その結果、新規活性代謝物17,18-diHEPEの構造について立体化学を確定することに成功した。
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