研究概要 |
ω3脂肪酸合成酵素のトランスジェニックマウス(fat-1マウス)と高速液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトロメトリー(LC-MS/MS)を用いたω3脂肪酸代謝物の網羅的メタボローム解析を行った結果、急性腹膜炎における初期の好中球の浸潤を強力に抑制する活性を有する抗炎症性代謝物として17,18-diHEPEを新規に同定した。本活性代謝物の絶対構造を解析した結果、17R,18(R/S)-dihydroxy-5Z,8Z,11Z,13E,15E-eicosapentaenoic acidであることが明らかになった。さらに本活性代謝物には好中球の遊走能をナノモルレベルで抑制する活性があることがEZ-TAXIScanを用いた解析から明らかになった。本活性代謝物をresolvin E3(RvE3)と命名し、ここまでの成果を国際誌で発表した(Isobe Y. et al. J.Biol. Chem. 287,2012)。さらに、RvE3の17位およ18位の水酸基の配位がそれぞれ異なるRS,RR,SR,SSの計4種類のジアステレオマー全ての有機合成を完了し(本学部有機反応化学教室、井上将行教授との共同研究)、それらの抗炎症活性について構造活性相関をより詳しく調べた。その結果、天然に存在するRS,RR体は他の異性体と比べて活性が比較的高いことが明らかになった。さらに合成したRvE3をオーファンGPCRのリガンド検出システムに適用した結果、これまでにいくつかの受容体候補が得られている。
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