研究概要 |
本研究は、ヒストンの化学修飾を介してヌクレオソーム構造変換反応が引き起こされるメカニズムを明らかにすることを目的とした。生体シグナルの一つの終着点であるヒストン化学修飾により、ヌクレオソーム構造変換反応が部位特異的にどのように引き起こされるのか、という課題に迫った。CIAがTFIIDのサブユニットの一つであるCCG1(Cell Cycle Gene1)中のアセチル化ヒストン認識ドメインであるプロモドメイン(以下、CCGIDBD(double bromodomains)と表記)と相互作用することは既に見出しており(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2002)、この相互作用の構造基盤を解析することにより、ヒストンアセチル化とCIAによるヌクレオソーム構造変換反応の連関性を解明することを試みた。CIA-CCGIDBDの複合体結晶構造解析に成功し、その生化学的、遺伝学的解析を通して、CIAがCCGIDBDを介してアセチル化ヒストンを含むヌクレオソームに特異的にリクルートされ、その後、CIAがヒストンに受け渡されることによりヌクレオソームの破壊が進行するという分子機構モデルを提唱した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2010)。更に、ヒストンのN末テイルへの化学修飾に効果をもたらすC末コア領域をヒストン点変異体ライブラリーを用いて解析を行い、ヌクレオソームコア領域のある領域がヒストンH3/K36のメチル化制御に関与することを示した(Genes Cells,2010)。以上の構造解析以外にヒストンシャペロンCIAの複製時における機能解析を行い、伸長段階に作用する知見を得た(GenesCells,2010)、更にCIA以外のヒストンシャペロンFACTについても機能解析を行い、複製時の伸長過程における反応速度を制御するといった知見を得た(J.Biol.Chem,2011)。ヌクレオソーム構造変換レベルだけでなく、染色体レベルでの構造変換機構を解析する第一歩として染色体分配機構の解析を行なった(EMBOJ.,2011)。
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