研究概要 |
本年度は主に以下の成果が得られた。 1)GluA2の表面発現量の調節機構 AMPA受容体はGluA1~4のサブユニットからなるが、GluA2は成体マウスの海馬においてほとんどのAMPA受容体に含まれているため、本受容体の細胞内輸送制御に重要なサブユニットであると考えられている。GluA2には4カ所のN型糖鎖付加部位(N256,N370,N406,N413)が存在する。本年度は昨年度作製したGluA2の糖鎖付加部位に変異を加えた変異体を用いてGluA2の細胞表面発現量と糖鎖との関係を解析した。その結果、GluA2上のN370に変異を加えたものでは、その細胞発現量が顕著に減少し、ほとんどのものがERに存在していた。またN413に変異を加えたものは、細胞表面発現量に大きな影響はないものの、HNK-1糖鎖の付加が大きく抑制されることが明らかとなった。従ってGluA2上のN370に存在する糖鎖は細胞表面への輸送に重要な糖鎖であり、N413がHNK-1糖鎖の主要な付加部位であることが明らかとなった。 2)HNK-1糖鎖の発現調節機構 申請者らは既にHNK-1糖鎖の生合成に中心的な役割を担うグルクロン酸転移酵素(GlcAT-P)のX線結晶構造解析を行い、グルクロン酸転移機構の詳細を明らかにした。しかし、GlcAT-Pの触媒領域に、電子密度を与えない構造不明の領域(flexible loop)が存在しており、その領域が本酵素の機能・性質にどのように関与しているのかは不明であった。そこでまず、GlcAT-Pのloopを欠失させたGlcAT-PΔloopを作製し解析したところ、GlcAT-PΔloopの酵素活性は野生型に比べ著しく低下していることが明らかとなった。さらに、loop配列に変異を加え、どのアミノ酸が重要であるのかを調べたところ、loop内の酸性アミノ酸に変異を加えた場合に酵素活性が低下することが明らかとなった。以上の結果より、GlcAT-Pに存在するflexible loopはその転移活性に必須であり、特に酸性アミノ酸がloop機能に重要であると考えられた。
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