研究概要 |
本研究は、ガラスキャピラリや光ファイバを加工したプローブを用いて、“ひとつひとつの核膜孔複合体(NPC)”を対象にその輸送機能を計測するシステムを構築し、これまでの「部品」や「集団」に関する解析だけでは説明困難であった「個」のNPCにおける物質輸送の分子メカニズムに迫ることを目的とする。本年度は研究計画に従って研究を遂行し、これまでに下記の成果を得た。 ・ガラスキャピラリを加工することで先端開口100-300nmのプローブを作成し、この中に緑色蛍光タンパク質でラベルしたインポーティンβ(大腸菌で発現・精製)と、コントロールとして赤色でラベルしたグロブリンタンパク質を同時に充填した。HeLa細胞をジギトニンで処理して核膜を露出させ、マイクロマニピュレータを用いてこのキャピラリ先端を核膜上に接触させ、キャピラリ内の蛍光タンパク質が核内に移行する様子を経時的に蛍光顕微鏡で観察した。その結果、接触後1時間で核内の緑色蛍光シグナル(インポーティンβ)がコンスタントに上昇したが、赤色のシグナル(グロブリンタンパク質)は全く上昇しなかった。一方で、キャピラリを接触させていない核では、どちらの蛍光シグナルも全く増加しなかった。このことは、キャピラリ内のインポーティンβが核膜上の核膜孔複合体を通過して核内に移行したことを示すものである。 ・長時間に及ぶ観察において、キャピラリが核膜表面からずれるという問題が頻発したため、倒立顕微鏡のステージ上にガラスキャピラリを安定に固定する特殊なホルダをデザインし、設置した。これにより、x,yおよびz方向のドリフトの軽減に成功した。
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