研究概要 |
1.光合成水分解反応におけるFTIR法によるプロトン放出検出: 水分解反応の光駆動中間状態サイクルにおけるプロトン放出過程を調べるため、フーリエ変換赤外(FTIR)法を用いた新たなプロトン検出法を開発した。高濃度のMes緩衝液に水分解によるプロトンをトラップさせそのMesのプロトン化反応をFTIR差スペクトルで観測した。その結果、水分解過程におけるプロトン放出パターンは4つの中間状態遷移でほぼ1:0:1:2となることが示された。 2.光化学系IIにおけるPsbPの酸素発生系との直接的相互作用: FTIR法を用いて表在性蛋白質の酸素発生反応への関与について調べた。表在性蛋白質PsbP,PsbQ,PsbOを除去、または再構成した光化学系II試料を用いて、酸素発生系のFTIR差スペクトルを測定した。その結果、PsbPの脱着によってのみ酸素発生系の蛋白質コンフォメーションが変化することが示された。このPsbPの直接的相互作用が、そのCa^<2+>・Cl^-保持能の発言に関与していると考えられる。 3.光合成酸素発生系におけるCP43-354位グルタミン酸のFTIRによる構造解析: 酸素発生MnクラスターへのCP43-E354配位構造を調べるため、シアノバクテリアSynechocystis sp.PCC 6803のCP43-E354Q部位特異変異体を用いて酸素発生系のFTIR差スペクトルを測定した。その結果、カルボキシル基の対称および逆対称伸縮振動領域に大きなスペクトル変化が観測された。これらのことから、CP43-E354はMn原子への配位子の一つであることが示された。 4.酸素発生系における過渡的中間体の時間分解赤外測定: 光合成酸素発生反応における酸素分子形成直前の反応中間体の構造を調べるため、時間分解赤外測定を行った。その結果、カルボキシル配位子の対称伸縮振動領域(1400cm^<-1>)、及び水素結合構造由来の極性プロトンの振動領域(2500cm^<-1>)について、各中間状態遷移における赤外吸収の時間変化を観測することができた。今後、S/Nを向上させ、過渡的中間状態の構造及び反応について、より詳細な解析を行う予定である。
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