研究概要 |
1. 全反射吸収赤外法(ATR-FTIR)と偏光赤外法を組み合わせた偏光ATR-FTIR法を用い、光化学系II膜標品中の酸素発生マンガンクラスターのアミノ酸配位子の構造を調べた。その結果、反応に関与するAsp, Glu, C端由来のカルボキシル基の配向構造及びその変化に関する知見を得た。 2. 光合成水分解反応は基質アナログであるアンモニアによって阻害されることが知られているが、その分子機構は不明であった。そこで本研究では、アンモニア阻害の分子機構を、酸素発生阻害のpH依存性の測定と光誘起FTIR差スペクトル法を用いて調べた。その結果、pH7以下の酸性領域ではアンモニウムイオンNH^<4+>が阻害剤として働くこと、NH^<4+>がマンガンクラスター近傍のカルボキシル基と相互作用することによって阻害が起こること、などが明らかとなった。 3. 酸素発生マンガンクラスターの近傍にはアルギニン側鎖(CP43-357R)が存在し、水分解反応において鍵となる役割を果たすと考えられてきたが、その詳細は全く不明であった。そこで、アルギニン側鎖のグアニジウム基を^<13>C,^<15>Nなどで同位体置換した光化学系IIをシアノバクテリアを用いて調製し、そのFTIR解析を行った。その結果マンガンクラスターと直接相互作用するArgの存在を確かめ、それがS_1, S_2状態においてプロトン化構造を持っていることが明らかとなった。
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