研究概要 |
1.閃光誘起フーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトル法を用いて、人工電子受容体として添加したフェリシアン化物イオンの反応を追跡し、光化学系II蛋白質中の電子移動反応の量子効率を調べた。その閃光数依存性から、光合成水分解反応の各中間状態遷移(S0→S1,S1→S2,S2→S3,S3→S0)のミスファクター(次の中間状態に遷移しなかった水分解中心の割合)を見積もる新たな手法を開発した。この手法を用いてシアノバクテリア及びホウレンソウの水分解反応を解析した結果、ミスファクターはS0→S1; S1→S2 < S2→S3 < S3→S0 の順に大きくなり、酸素が放出されるS3→S0遷移において最大となることが示された。 2.高等植物の光化学系IIに結合する表在性蛋白質(PsbO,PsbP,PsbQ)が水分解反応を制御するメカニズムを明らかにするため、様々な部位特異的変異を施したPsbP蛋白質を光化学系IIに再構成し、その相互作用部位および水分解系の構造への効果をFTIR法を用いて調べた。その結果、PsbPのN末端及びH144近傍がコア蛋白質への結合に関与すること、PsbPが適切に結合することにより、水分解系の蛋白質二次構造が変化し、水分解系の構成要素であるCa2+および Cl-の結合を安定化することが明らかとなった。また、PsbQは単独では水分解能に寄与しないが、PsbPの結合を補助する役割を持ち、それによって水分解反応を制御していることが示された。
|