研究課題
我々は、超好熱性古細菌由来II型シャペロニンがin vitroで高いタンパク質フォールディング活性を有することを利用し、II型シャペロニンの詳細な反応機構の解明を進めている。これまでの研究の結果、ATPの結合によりサブユニットのコンフォメーションが変化し、シャペロニンのリングの蓋が閉じ、さらに隣接するHelical Protrusion間の相互作用によりClosed構造が安定化するという過程が明らかになった。我々は、この安定化したClosed構造内で変性タンパク質がフォールディングすると考えている。そこで、II型シャペロニンの「ATP依存的な構造変化」と「タンパク質フォールディング反応」の相関を速度論的に解析することを目的に、Stopped flowを用いた解析を行った。まず、Helical Protrusionの先端にトリプトファンを導入した変異体L265Wを用いて、ATPの結合に伴うシャペロニンの構造変化速度を解析した。ATPが結合するとリングの蓋が閉じ、トリプトファンが疎水的環境になるため蛍光強度が増加する。様々なATP濃度でStopped flow実験を行い、蛍光強度変化の速度を測定した。低濃度では蛍光変化の速度がATPの濃度に比例しており、高濃度では構造変化速度が律速になりほぼ一定の速度で飽和した。この結果はATPの結合により各サブユニットが独立して構造変化をするという仮説を指示しており、各段階の速度定数を解析することができた。興味深いことに、高濃度のATP存在下では、蛍光強度が最高値に達した後、徐々に減少することが確認された。一方、サブユニットの赤道ドメインにループ領域にトリプトファンを導入した変異体L56WでもATPの結合・加水分解に伴う構造変化を反映した蛍光変化が確認され、Stopped flowによる速度論的解析を行った。L265Wとほぼ同じ結果が得られたが、蛍光強度の減少は確認されなかった。この結果から、高濃度ATP存在下においてL265Wで確認された蛍光強度の減少はATPの加水分解によるものではなく、Closed構造の安定化に伴う局所的構造変化を反映していることが分かった。これらの結果は、II型シャペロニンの構造変化及び蛋白質フォールディング機構解明につながる重要な成果である。
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