1分子シャペロンの一種であるグループ2型シャペロニン(CPN)は二重リング構造を形成し、リング内部の空洞に変性蛋白質を取り込み、ATP依存的な構造変化により変性蛋白質の構造形成を促進する。この構造変化機構に焦点を当て、3つの観点から研究を行った。(1)構造変化におけるリング内サブユニット間協調作用機構解明を目的に、Trpを導入した変異体サブユニット(F)とATP加水分解欠損変異サブユニット(A)が交互に配置されたヘテロ変異体Cpn(FA)_8を作製し、その特性を解析した。その結果、リング内にATP加水分解欠損変異サブユニットが存在してもATP依存的なタンパク質フォールディング活性及びリング全体の構造変化能は維持されるが、その速度は低下することが示された。この結果から、CPN機能には隣接したサブユニット間の協調した構造変化が寄与していることが示唆された。(2)Stopped-flow Fluorometryと時分割回折X線追跡法を用いた解析により、CPNの構造変化は2段階であることを明らかにした。まず、各サブユニットにATPが結合して構造変化が起こり部分的にCloseする。さらに、この構造変化の後、リングの回転を伴う2段階目の構造変化が引き起こされ、Clgsed構造が形成される。この2段階目の構造変化はATP加水分解に依存し、フォールディングに必須であることが示唆された。(3)リング間の協調作用機構を解明するために、循環置換型連結CPN(CPN^<CPC>)を用いた非対称型CPN(CPN^<ASR>)の構築方向を確立した。CPN^<CPC>は、2個のサブユニットを連結し、そのN末端またはC末端を欠損させ逆の末端に付加した変異体である。CPN^<CPC>と野生型シャペロニンを共発現させると、それぞれが独立にリングを形成するため、CPN^<CPC>と野生型のそれぞれで形成されるリングからなる、CPN^<ASR>が形成される。このCPN^<ASR>を解析することで、これまで未解明であった、リング間の協調機構を明らかにできる。
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