研究課題
LEAタンパク質は水溶液中ではランダムコイルであり結晶化が困難である。それゆえ、乾燥状態での高次構造を解明するおそらく唯一の手段は、in silicoシミュレーションである。そこで、LEAタンパク質の11-mer繰り返し配列を2回繰り返した22merモデルを複数本含む系を用意し、レプリカ交換分子動力学シミュレーションを実行した。すなわち、コンホメーション空間の中でのランダムウォークを行い、最頻出構造からエネルギー最安定の会合構造(例えば、αヘリカルコイルドコイル)を探索した。また、コントロールペプチド(アミノ酸組成は同一であるが配列をランダムにしたもの)についても同様の計算を行い、会合体形成が配列特異的かどうかも調べた。以上の結果より、1)コンセンサス配列から成る22merモデルは、真空中(乾燥状態)においてαヘリカルコイルドコイルを形成すること、2)これは親水性の側面同士が、双極子モーメントを反平行型にして向かい合った構造をしていること、を明らかにした。一方、コントロールペプチドでは、αヘリカルコイルドコイルを形成するものの割合はごくわずかであり、このような乾燥時おける構造化はLEAタンパク質に特異な現象であることが判明した。上の22merのLEAモデルとコントロールを化学合成し、以下の実験を行った。FTIR測定により、LEAモデルペプチドは水溶液中ではランダムコイルであるが乾燥するとコイルドコイルを形成することを明らかにした。また、DSC測定により、LEAモデルは乾燥すると100℃付近でガラス化することを示した。以上の構造化とガラス化はトレハロースとの混合系に対しても観測された。以上を総合することにより、LEAタンパク質の作用機構モデルの一つである鉄筋コンクリート仮説の妥当性を裏付けた。
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Biochemistry 49
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