研究課題
天然G3LEAタンパク質の特質である11-mer繰返し配列を2回繰返した22merペプチドモデルが、細胞膜の乾燥誘導凝集・融合に対してどの程度抑制効果を示すかを調べた。本研究では通常の細胞膜と同程度のサイズをもつ巨大単一層リポソーム(GUV)を細胞膜モデルとして用いた。調製直後のGUV溶液は45μm付近にピークをもつ粒径分布をもつが、保護物質を添加せずにそのまま乾燥→再水和すると、ほぼ完全にピークがつぶれた。一方、LEAペプチドやトレハロースを添加した系では、4.5μm付近のピークは保持され、しかも保護物質の濃度依存的にピーク面積(保持される粒子数)が増加し乾燥前の値に近づいた。また、LEAペプチドとトレハロースの効果を比較したところ、両者は添加重量換算で同程度の効果を示した。これらの結果を原子レベルで解釈するため、MDシミュレーションを実行した。その結果、LEAペプチドが脂質二重膜表面を覆うように結合する様子が見出された。詳細な解析により、LEAペプチドに存在するLys残基側鎖のアミノ基と脂質二重膜のリン酸部が特に分子間水素結合に関与していることがわかった。すなわち、Lys側鎖が膜表面に“アンカーを下ろした”かのように結合していた。これらのことからLEAペプチドは細胞膜の表面をシールディングすることにより、細胞同士が直接接触して融合や凝集することを防ぐ働きをもつものと考えられる。言い換えると、このペプチドは“分子シャペロン”として働くことが示唆された。その他、今年度は昨年度に引き続きこのペプチドのタンパク質凝集抑制機能についても調べたが、リゾチームに対しては天然のLEAタンパク質より優れた抑制能を示すことが実証された。この結果の主たる原因は、LEAペプチドのPIが中性付近にあるため、パートナータンパク質のPIによらずに効果を発揮できるためである。
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