本申請研究では、タンパク質のフォールディング現象を理解するために、タンパク質の運動を一分子レベルで検出するための主に二つの実験装置開発を行う。第一は、一分子を長時間観察するための球面鏡システムである。この装置を用いて、フローセル中に存在する分子の動きをとめるフローストップ実験を行うことで、一分子の時系列データを長い場合には数十秒にもわたって観察することを可能にした。この装置を用いて、変性したシトクロムcのエネルギー地形を解析する研究を進めた他、フローセル中における分子の拡散運動を解析し、分子の大きさに関する情報を得ることを可能にした。さらに、膜タンパク質が機能する過程を一分子観察することに成功した。 第二に、一分子の蛍光強度データを高時間分解能で観察する実験を可能にした。この装置は、従来のポイントフーカス型の共焦点顕微鏡を改良し、ラインフォーカス型の共焦点顕微鏡としたもので、試料をフローセル流しながら観測することにより、活性酸素でダメージをあまり受けていない新鮮な試料を常に供給することで、励起レーザーを強く照射し単位時間内に検出できる光子数を増やすことで、高時間分解能の一分子観察を可能にした。この装置を二色の色素でラベルしたProtein Aについて適応することで、この蛋白質の変性状態において複数の副順位が存在することを明らかにした。 以上のように本研究によって一分子蛍光観察の実験手法が格段の進歩を遂げた。この装置をさらに多くのタンパク質系に応用し、知見を蓄積する作業が必要だと考えられる。
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