これまで好アルカリ性細菌から新規なNa+駆動型のべん毛モーター固定子MotPSを発見し、枯草菌の2つの固定子MotABとMotPSの各サブユニットの機能的な役割を解明した。本研究では①枯草菌が持つべん毛モーターについてモーターのトルク特性を解析すること、②枯草菌のべん毛固定子MotAB、MotPSと相互作用する側の回転子複合体の構成タンパク質であるFliGに着目し、モーターの回転に重要なアミノ酸残基を特定すること、③新規性が期待された好アルカリ性細菌Bacillus alcalophilusのべん毛モーターの機能を解析すること、④枯草菌が持つNa+駆動型固定子MotPSについて、大量精製系を確立してX線結晶構造解析を行い、モーターの回転機構を原子レベルで解明することを目的とした。 2012年度は、①については、成果がまとまり次第、投稿を予定している。②では、固定子の発現と変異箇所の影響から構造面と機能面に重要なアミノ酸残基の同定を行うことができた。また、回転子側のタンパク質FliGに関しても、現在、機能面で重要なアミノ酸残基の同定を行っている。③では、好アルカリ性細菌Bacillus alcalophilusのべん毛モーターが、これまで報告例のないK+を利用できる新規べん毛モーターであることを明らかにした。④では、枯草菌のMotPSについて大量精製系の確立と結晶化を進めた。精製タンパク質の量が微量でスクリーニングが可能な結晶化ロボット等を用いた結晶化スクリーニングを行ったが、得られた結晶の回折測定で目的の回折像はまだ得られていない。今後は、不活性な複合体やサブユニット単独の結晶化などのステップを経る地道な作業によって完全な複合体構造の構造解明に近づけたいと考えている。
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