研究課題
本研究では、核とミトコンドリアの連携機構に関する分子解明を目指した。具体的には、モデル生物線虫Cエレガンスならびにヒト培養細胞、各種植物を用いて、以下の研究成果が得られた。ヒト培養細胞において、核のチェックポイント制御に関わるATRタンパク質を過剰発現させた際に細胞質に空胞化が生じ、これはオートファジーが生じた結果であることをつきとめた。さらに、この空胞化にはATRのキナーゼ活性領域は必要なく、N末端側のHEATリピート配列の過剰発現で生じることを明らかにした。また、類似のATM、mTOR、SMGなどの過剰発現では観察されず、ATR特異的な現象であることが確かめられた。以上の結果から、これまで核のチェックポイント制御タンパク質ATRの新たな機能として、細胞質におけるオートファージの制御にも関与していることが発見された。また、CエレガンスのATR(atl-1)欠損変異体を用いて、細胞質のなかでも、特にミトコンドリア障害に対する個体レベルの応答について調べた。ミトコンドリアの複製および転写阻害剤であるエチジウムブロマイド、呼吸複合体IIIの阻害剤であるアンチマイシンAを処理したときの表現型を解析したところ、これらに対する感受性がATRの欠損により増加することが確認された。また、哺乳類におけるATRの欠損では早老症になることも知れれており、線虫ATRの欠損と寿命との関連について調べた。その結果、線虫では逆に長寿命となった。このことは変異体において軽いミトコンドリア不全が生じており、その結果、SODなどの抗酸化酵素の活性化により寿命が延びたと判断された。植物を用いた実験では、高温や低温が特に生殖成長に及ぼす影響を、核とミトコンドリア、さらに葉緑体のDNA複製の関連から研究を展開し、温度ストレスがオルガネラDNAの複製に対して、より顕著な影響を及ぼすことを見出した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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