研究概要 |
研究1.RNA局在・RNA安定性・局所的翻訳制御の分子機構 出芽酵母の非対称分裂は細胞運命決定因子Ash1をコードするmRNAの局在により決定する。申請者は、これまでにmRNAのin vivoイメージング技術を開発し、輸送中のmRNAの翻訳阻害および局所的な翻訳制御に関与するRNA結合タンパク質Khd1,Mpt5、翻訳制御因子Mkt1/Pbp1複合体を明らかにしている。また、ASH1以外のmRNAの局在とその安定性制御機構を解析している。輸送中のmRNAの翻訳阻害および局所的な翻訳制御、RNAの局所的安定性制御の分子機構を解明する。また、動物細胞においてはKhd1のヒトオルソログhnRNP KによるStress granuleへの局在機構、ストレス時におけるRNAの安定性および翻訳の制御機構を解明する。本年度の研究では、hnRNP Kの相互作用因子RBM42を単離し、hnRNP KとRBM42がストレス時にStress Granuleに局在すること、ストレス条件下でのATPレベルの維持に働くことを明らかにした(Fukuda et al., 2009)。 研究2.RNA結合タンパク質Staulによる筋分化の制御機構とRNA局在制御 哺乳類Staulは、神経細胞において樹状突起へと輸送されるRNA Granuleに含まれ、mRNAの局在化に関与している。神経以外の細胞にもStaulは発現しているが、その機能は不明であった。申請者は、RNA結合タンパク質Staulが筋芽細胞株C2Cl2においても発現し、筋分化に対して抑制的に機能することを明らかにした。筋の分化過程は、Myf5、MRF4、MyoD→Myogeninから構成される転写因子のカスケードにより調節されているが、私共の結果は、筋分化の調節は転写因子のカスケードだけでなく、RNA結合タンパク質Staulを介したRNA局在を含む転写後調節によっても調節されることを示した。StaulがどのようなRNAの局在化、翻訳制御を介した筋分化の制御機構を解明する。また、Staulが線維芽細胞の運動先端に局在するという知見も得ており、RNA局在制御と細胞運動の関連を明らかにする。本年度の研究では、RNA結合タンパク質Staulのターゲット遺伝子の候補を得た。
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