研究課題
研究代表者は、mRNAが翻訳終結と共役して分解される」という正常なmRNAの分解開始の普遍的分子機構を解明した。そのなかで、G蛋白質である翻訳終結因子eRF3がその制御において中心的な役割をはたしていることを証明した。一方で、(1)ナンセンス変異型mRNA分解(NMD)、(2)ノンストップ型mRNA分解(NSD)、(3)リボソーム停滞型mRNA分解(NGD)という異常なmRNAを分解する品質管理が知られているが、その分子機構の詳細については不明な点が多い。本研究においては、研究代表者らが独自に解明した正常なmRNAの分解開始機構の研究成果とその過程で用いた独自の研究手法を応用することにより、いまだ解明の進んでいない異常なmRNAの分解機構(品質管理機構)を解明し、mRNA分解全般に共通する普遍的分子機構を解明することを目的としている。昨年度に引き続き、本年度においても主にノンストップ型mRNAの分解機構(NSD)について解析をおこなった。昨年度までに終止コドンを除いたルシフェラーゼをmRNAレポーターとして、HBS1がNSDに必要であることを明らかにしてきたが、本年度は、HBS1と複合体を形成するDom34、および、エキソソームの構成因子であるRrp6、Dis3、Rrp40、さらにエキソソームと複合体を形成するSki2/Ski2Lについても解析をおこない、これらの因子の欠損によりNSDに異常をきたすことから、これら因子群がNSDに必要な因子であることを明らかにした。これまで哺乳類においてはNSDは存在しないと考えられてきたが、NSDのメカニズムは存在しており、Hbs1-Dom34とそれに結合するエキソソーム-Ski複合体によって担われていることを証明することができた。一方、ノンストップmRNAから翻訳されてできた異常な蛋白質を分解する機構としてLtnをユビキチンリガーゼとするプロテアソームによる分解系が酵母で報告されているが、哺乳類においてもLtnのオーソログであるListerinが分解にはたらくことも明らかにした。
3: やや遅れている
本研究で取り上げた3つの課題のうち、特にNSDの研究に進展がみられたため、NSDを重点的におこなった結果、NGDおよびNMDの解析が遅れている。
上述の通り、NSDについては当初予定通りその分子機構の解明に成功したことから、今後はNGD、NMDについて重点的に解析を行なう。
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EMBO J
巻: 30 ページ: 1311-1323