研究概要 |
我々は、ヒト細胞を用いた複製のライセンス化因子Cdt1の分解機構の解析により、DNA複製の開始に依存して機能する新たなタンパク質分解システムを見いだした。この系は、クロマチンに結合したPCNA依存的に、CRL4(Cul4-DDB1)-Cdt2が基質タンパク質Cdt1やp21をユビキチン化する。この系は、またUV照射などのDNA損傷を受けた場合にも誘起される。本研究では、その分子機構の解析を進め、次のような結果を得た。 1.PCNAのクロマチンへの結合は、5量体よりなるRFCローダータンパク質を必要とする。最大サブユニットが異なる4種(RFC1,Ctf18,Elg1,Rad17)が存在する。どのローダーがCdt1の分解に関与するのか、siRNAを用いたノックダウン法で調べた所、UV損傷後の分解にはRFC1が必要であるが、興味深いことに、S期においてはCtf18が必要であることが明らかとなった。また、Ctf18の機能が塗いと、DNAの再複製が誘導されやすくなることを見いだした(Mol Cell Biol,平成24年4月2日受理された) 2.クロマチンに結合したPCNAを介して、CRL4-Cdt2により分解されるCdt1やp21はPIPboxを介してPCNAと結合することが分解に必要である。一方、Cdt2自体もPCNAと結合することを見いだした。Cdt2のC末にPIPboxがあり、この部位を変異するとPCNAとの結合が無くなった。精製したCRL4Cdt2とPCNAタンパク質を用いても"PIPbox依存的にCdt2がPCNAと結合することが確認できた。In vitroユビキチン反応による確認が今後の課題として残っている。 クロマチン上でPCNAを介して多数の分子が、DNAの複製、修復、クロマチン形成に寄与する。以上の結果より、CRL4Cdt2によるターゲットタンパク質(Cdt1やp21)の分解は、新たにローダータンパク質による制御機構が見つかるなど、この機構が非常に精巧に制御されており、再複製の抑制などを通してゲノムの安定維持に寄与することが明らかとなった。
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