研究課題
セントロメアに形成される微小管との結合装置である動原体は、染色体動態制御の中枢である。その動原体の重要な機能の一つは、微小管との結合を感知する「紡錘体形成チェックポイント」の発信にあるが、微小管との結合がどのようにしてこの信号の発信を止めるのかは分かっていない。我々は先行研究において、「動原体のストレッチング」という動原体の形態変化が、チェックポイントを解除するために必要であることを見出した。それを承け、本研究では、動原体ストレッチングの発生機構を明らかにすることによって、チェックポイントの解除機構の手掛かりを得ることを目的とした。先ず、単極性紡錘体を観察したところ、ストレッチングの発生には、微小管結合は必要であるものの、必ずしも動原体を引く力「張力」は必要でないことが示唆された。次いで、この可能性を検証するために、これをヒトの人工染色体を恒常的た発現する細胞を作成し、染色体腕部を欠如しているために動原体に引く力が作用し得ない状況をつくった。その結果、こうした動原体においても、ストレッチングは通常の発生頻度で観察され、ストレッチングは「張力」によって発生する訳ではないと考えられた。しかし、その一方で、微小管のダイナミクスを抑えるとストレッチングは消失した。そして、Aurora B活性を低下した状態、あるいはAurora Bの標的基質と思われる動原体分子Ndc80の非リン酸化型変異体を発現させて、微小管先端を側面から捕捉する力を強めた状態においては、ストレッチングの発生頻度が上昇した。このことから、ストレッチングは、微小管の重合と脱重合による微小管先端の伸び縮みを、動原体が受容し、その結果、動原体の形態が変化しているという新たな視点が導き出された。
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http://www.jfcr.or.jp/tci/exppathol/index.html