細胞分裂時の紡錘体の位置決定は分裂軸・分裂面を決定する上で重要であり、発生過程における細胞運命決定や組織構築において重要である。紡錘体位置決定において細胞表層アクチンと星状体微小管の相互作用が必須の役割を担っているが、仲介する分子機構や制御機構は不明である。本研究では、1)細胞周期制御因子による分裂期の細胞表層アクチンの制御機構の解明、2)分裂期の表層アクチンと星状体微小管の動態解析、3)表層アクチンと星状体微小管の相互作用を制御する分子機構の解明、に焦点を当てて、動物細胞の対称及び非対称分裂における紡錘体位置決定の分子機構を解明することを目的に研究を行い、以下の結果を得た。1)アクチン脱重合因子であるコフィリンを脱リン酸化、活性化するSlingshotは分裂期中期にリン酸化され、不活性化される。細胞周期依存的なSlingshotのリン酸化に関与するキナーゼを検討した結果、Plk1がSlingshotにPolo boxを介して結合し、リン酸化することを見出しだ。2)細胞周期依存的なアクチン動態を解明するため、生細胞内で単量体アクチン濃度の変化を経時的に測定できる方法を開発した。本法は、可逆的な光活性化蛍光蛋白質Dronpaを融合したアクチンを用いて、その光活性化後の短時間における蛍光の減衰量を経時的に測定(s-FDAP法)するものである。また、分裂期中期における細胞表層アクチンの動態についてYFP-actinを用いたFDAPおよびFRAP解析を行った。3)紡錘体位置決定に関与すると考えられるLGNや細胞極性形成因子の分裂期中期における相互関係を検討し、ダイニン軽鎖LC7、InscuteableがLGNと同様に紡錘体極に対面する両側の細胞膜上の局在を示した。
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