研究概要 |
低分子量G蛋白質Rabは真核生物に普遍的に保存された膜輸送の制御因子である。出芽酵母では11種類、線虫・ショウジョウバエでは約30種類のRabアイソフォームが存在するのに対し、ヒトやマウスでは60種類以上のRabアイソフォームが存在することから、高等動物の高度に特殊化した組織・細胞での複雑化した膜(小胞)輸送との関連性が示唆されている。本研究課題で対象としてきたRab33は脊椎動物に広く保存されており、脊椎動物に特異的な何らかの膜輸送過程を制御するものと考えられる。一般的に、Rabの膜輸送における役割を解明するためには、その下流の因子である特異的なエフェクター分子(活性化型のGTP-Rabに結合する分子)の同定とその機能解析が不可欠である。そこで本研究課題では、Rab33に特異的に結合するエフェクター分子の同定とその機能解析を通して、Rab33が制御する膜輸送過程(生命現象)の分子メカニズムの解明に取り組んで来た。これまでの研究で、活性化型固定化Rab33をbaitにしたスクリーニングにより、複数の新規Rab33結合蛋白質(Atg16L1/2,RUFY2/3など)の同定に成功している。このうちAtg16L1に関しては、Atg16L1の中央部分に存在するコイルドーコイル領域を介してRab33Bと結合すること(Autophagy,2011)、また、Rab33Bの不活性化因子(Rab33-GAP)としてOATL1を同定し、この分子がLC3/Atg8を介してオートファゴソーム上に局在することによりオートファゴソームの成熟過程を制御することを突き止めた(JCB,2011)。さらに、RUFY2/3に関しても、欠失変異体を用いた解析によりRab33結合サイトがコイルド-コイル領域であることを明らかにし、神経機能との関連性を初めて示唆した(CSF,2011)。
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