研究課題
中心子前駆体はアモルファスリングという不定形構造とカートホイールという9回対称の放射状構造から構成される。本研究の目的は、クラミドモナスを用いてこれらを構成するタンパク質を同定・解析することにより、中心子の特徴的な9回対称性構造が構築される分子機構を明らかにすることである。これまでの我々の研究から、中心子タンパク質SAS-6がカートホイールを構成することがわかっている。22年度は、英国MRCのグループとの共同研究により、SAS-6分子の結晶構造を明らかにした。その結果、1)SAS-6は2つの球状の頭部とコイルドコイル構造をとる棒状の尾部からなる二量体を形成すること、2)二量体頭部間の疎水性結合を介して9対称に会合しうること、などが明らかになった。この結果より、カートホイールの中央部分はSAS-6分子が会合することによって構築されると予測された。この予測を検証するため、クラミドモナス突然変異株bld12を用いた解析を行った。その結果、構造から予測される機能部位に変異を導入したSAS-6は細胞内機能を失うこと、SAS-6尾部末端に標識したHAタグがモデルから予測される位置に観察されたことから、この予測が正しいことが照明された。一方、アモルファスリングについては、その有力な構成蛋白質候補としてCRC70という新規蛋白質を同定した。CRC70はヒト中心体蛋白質Cep70と部分的に相同な蛋白質で、未熟な中心子に特異的に局在する。クラミドモナスとマウス細胞を用いた実験から、発現を抑制すると中心子形成も阻害され、過剰発現すると多数の中心子が異所的に形成されることがわかった。従って、CRC70は中心子前駆体の構成蛋白質として、中心子形成の足場を形成していると考えられる。
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