分泌蛋白質や膜蛋白質は、小胞体に於いて作られた後にゴルジ体に送られ、そこで修飾・選別されて、目的地に送られていく。これら小胞体やゴルジ体はそれぞれ網状構造と扁平膜積層構造という特徴的な形態を呈しているが、これらの形成維持に働く細胞内膜融合機構として97ATPaseによる膜融合機構がある。 細胞内小器官は、分裂期に入ると小胞化して細胞質全体に広がり、細胞分裂期終期に於いて娘細胞に於いて再構成される。この娘細胞における再構成に必要なp97膜融合機構としてp97/p47経路を我々は見出しており、さらに間期における細胞内小器官の維持に必要な膜融合機構としてp97/p37経路を報告している。今回我々は、このうちのp97/p47経路によるゴルジ体の再構成に必要な新規の因子としてWACを発見することが出来た。 WACはyeast two hybrid法によりVCIP135結合蛋白質として見出したもので、リコンビナント蛋白質を用いた検討によりWAC/VCIP135/p97の三者複合体を形成している事が明らかとなった。WACはまたVCIP135と結合してその脱ユビキチン化活性を促進した。 WACの細胞内分布を免疫蛍光抗体法で検討した所、ゴルジ体並びに核に局在する。このWACの発現を培養細胞に於いて抑制するとゴルジ体は小胞化した。また試験管内ゴルジ体再構成系を用いた検討では、抗WAV抗体がp97/p47経路によるゴルジ体の再構成を阻害したものの、p97/p37経路による再構成に対しては阻害効果を示さなかった。 以上から、WACはVCUP135と結合してその脱ユビキチン化活性を促進することにより、細胞分裂期終期におけるp97/p47経路によるゴルジ体の再構成に働いていると考えられた。
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