研究課題
私共は、これまでに、低分子量G蛋白質Arf6を中心としたシグナル経路、GEP100-Arf6-AMAP1経路が乳癌などいくつかの癌種の浸潤・転移形質獲得において根幹的役割を果たしていることを明らかにした。当該研究期間において、高浸潤性乳癌細胞群におけるArf6とAMAP1遺伝子の蛋白質発現量亢進に関して、microRNAによる翻訳過程の制御について検討を進め、乳癌細胞の浸潤性とその発現が逆相関するmicroRNAの中から、miR-203がArf6とAMAP1遺伝子3’-UTRに標的配列を持ち、両分子の蛋白質発現に関与することを見出した。さらに、高浸潤性乳癌細胞におけるmiR-203の遺伝子発現制御について、polycomb group 蛋白質群のサブユニットであるEZH2が、miR-203の発現を抑制することにより、Arf6とAMAP1遺伝子の蛋白質発現量の上昇が誘導される新規作用機序を見出した。さらに、低酸素下において乳癌細胞の浸潤性と共に、Arf6とAMAP1の遺伝子発現亢進に低酸素環境における癌の浸潤性や幹細胞性の誘導に関わる転写因子HIFが関与することを見出した。この結果に関連して、患者の多くにHIFの恒常的活性化が見られる腎癌に関して、その悪性度の進展とGEP100-Arf6-AMAP1経路を構成する分子群の発現との間に相関があることを見出している。乳癌モデルマウスを用いた組織学的解析から、GEP100及びAMAP1の発現が原発部位の腫瘍細胞群及び転移部位の腫瘍細胞群で高いこと、さらに、腫瘍周辺の新生血管、腫瘍内のマクロファージ及び線維芽細胞群においても高発現することを観察した。これらのことからGEP100-Arf6-AMAP1経路活性化と腫瘍微小環境の変化に連動したストローマ細胞群の活性化との関連性が強く示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)
J Cell Biol.
巻: 197 ページ: 983-996
doi: 10.1083/jcb.201201065.
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~g21001/index.html