からだの左右非対称性は、動物形態の基本的属性の一つである。左右軸は、前後軸や背腹軸とともに、体軸の要素として、胚発生の基礎となっている。したがって、左右非対称性の形成機構は、個体発生や臓器形成を理解するための中心的な課題の一つである。我々は、ショウジョウバエの左右非対称性の研究を、世界に先駆けて行ってきた。 1、 左右非対称性の形成に必要な新規遺伝子の検索・同定 胚消化管の左右非対称性形成に関与する遺伝子を同定するためには、各遺伝子の母性効果を除いた突然変異ホモ接合体において、消化管の左右性異常を示す突然変異を検索(マターナル・スクリーン)する必要があると考えた。申請書の研究計画にしたがい、平成22年度までに、突然変異原物質であるEMS(ethyl methanesulfonate)を用いて誘発した、第2染色体の左腕に存在する約400の突然変異について、マターナル・スクリーンを実施した。その結果、中腸の左右性がランダム化する3つの遺伝子の同定に成功した。 2、 左右非対称性形成の分子機構を解明する 平成21年度までの研究によって、Wntシグナルが、中腸の左右非対称性形成に重要な機能をはたしていることを明らかにしている。平成22年度においては、リガンドであるWnt4によって、古典的Wntシグナルが中腸の内臓筋で活性化されることが、中腸の正常な左右非対称性の形成に必要であることを明らかにした。また、中腸の左右非対称性形成には、非筋型MyosinIIが、中腸の内臓筋で機能することが必要であることを明らかにした。
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