研究概要 |
細胞極性形成の引き金は何かといったメカニズムなど本質的な問題に迫るため、我々はアフリカツメガエルを用いた原腸形成における細胞極性形成機構の研究から、微小管伸長の極性と細胞形態の極性の関連について研究を行ってきた。本研究では、それらの成果を基盤にバイオイメージング技術などを駆使して細胞が極性を確立するプロセスを細胞学的、分子解剖学的に解析し、とくに「分泌経路における膜輸送」の観点から細胞極性の形成機構について明らかにすることを目的としている。本研究では、とくにタンパク質・膜輸送が細胞極性、ひいては細胞形態形成に顕著な影響を及ぼす発生現象のひとつとして、神経管形成に着目して解析を行ったところ、神経上皮細胞の頂端極性形成におけるカドヘリンの細胞内輸送について成果が得られた。極性化していない細胞では細胞質に比較的均一に分布するカドヘリンが、細胞の伸長とともに頂底軸に沿って微小管アレイが発達すると、カドヘリンはネクチンによって頂端側の接着班周辺に動員されるという新たな発見があった(Morita,H.et al.Development,2010)。そのメカニズムに関する研究として、微小管の再編成、タンパク質輸送の解析を行っている。微小管の重合阻害剤ノコダゾールを用いた結果から、神経管形成に寄与する細胞の頂底軸に沿った伸長には微小管の重合、微小管アレイの形成が必要であるという結果を得ている。現在、我々がすでに発現クローニングによって、過剰発現がアフリカツメガエル原腸形成や神経管閉鎖に影響を及ぼすことを見出したSec23,Sec61,Sar1相同遺伝子産物が、微小管を介したカドヘリンの細胞内輸送に必要であるかを検証するために、それぞれの分泌制御因子に特異的なモルフォリノアンチセンスヌクレオチド(MO)を用いたノックダウン法によって機能を阻害し、その細胞表現型を観察している。
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