研究課題
脊椎動物の発生において、組織構築の基盤となる個々の細胞形態・機能の制御は極めて重要である。なかでも細胞極性は細胞の形態的・機能的トポロジーを決定する重要な要素であり、その制御は複雑な分子細胞機構によって支えられている。また、細胞極性は初期発生の原腸形成、神経管形成に必須であることも分かっている。この細胞極性形成に必須の多くの細胞極性因子は細胞に非対称に局在し、細胞形態・機能の非対称性を生み出す。本研究では細胞極性因子の偏在性の根源は膜・タンパク質輸送にあるとの仮説にもとづいて、その生物学的意義を明らかにすることを目的に研究を行った。我々はすでに,アフリカツメガエル胚における過剰発現系を用いた機能スクリーニングによって、原腸形成制御に関わると思われる複数の遺伝子を同定し、その多くがSecファミリー、ArfGAPなどをコードする膜・タンパク質輸送系(分泌系)に関わるものであることを明らかにしていた。この知見をもとに、これらの輸送の実体や、輸送システムの基盤となる細胞骨格系の再編成メカニズムを明らかにする実験を行った。その結果、細胞極性の形成には微小管の安定化、束化が必要であり、上皮形態形成に関わり、Opitz症候群の原因遺伝子がコードするMID1やその関連タンパク質MID2といった分子が微小管安定化因子としての役割を担っていることを示した。そして、この微小管の再編成が起こることによって、分泌顆粒や細胞極性因子が輸送されるためのレールの上を移動し、適所に局在するとのモデルを提唱することができた(Suzuki,M., Development 2010に報告)。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Development
巻: 139 ページ: 1417-1426
Dev.Biol.
巻: 364 ページ: 138-148