本研究は、我々がアフリカツメガエルのアニマルキャップ実験系を用いて同定した未分化胚性細胞から外胚葉細胞への分化決定を制御するmultiple Zinc-finger protein XFDL156を中心とした分子発生学的解析により初期胚の神経外胚葉の発生制御機序を明らかにすることを目的としている。H21年度は、1つの重要な問題であるXenopusとマウスでの胚葉形成の分子機構の比較を中心に解析した。そのためにマウスES細胞からの試験管内分化系を用いて、哺乳類細胞における外胚葉形成でのXFDL156相同遺伝子の役割を詳細に解析した。マウスでの相同遺伝子としてZfp12があるが、我々が以前に開発した選択的神経分化誘導法(SFEB法)を用いて解析したところ、未分化ES細胞から神経外胚葉に分化する過程で発現が誘導されることが明らかとなった。一過性のプラスミッド発現系を用いてZfp12の強制発現を行ったところ、神経外胚葉への分化が促進された一方、中胚葉遺伝子マーカの発現は抑制されることが明らかとなった。具体的には、Activinや血清処理条件下に分化中のES細胞に誘導される初期中胚葉マーカ(Tなど)の発現をmZFP12の強制発現は抑制したが、逆にこれらの処理で抑制されるはずの神経分化マーカSox1などの発現効率はmZFP12の強制発現で上昇した。中胚葉以外の非神経系細胞(表皮外胚葉など)への分化に対する影響を現在解析中である。
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